研究発表

IEEE Trans. on ITS に論文採録

2024年度に博士後期課程を卒業した右京が筆頭の論文「Robust Pedestrian Tracking With Severe Occlusions in Public Spaces Using 3D Point Clouds」が、交通システム分野における著名な国際学術雑誌であるIEEE Transactions on Intelligent Transportation Systemsに採録されました。

  • R. Ukyo, T. Amano, H. Rizk, H. Yamaguchi and T. Moriya, "Robust Pedestrian Tracking With Severe Occlusions in Public Spaces Using 3D Point Clouds," in IEEE Transactions on Intelligent Transportation Systems, doi: 10.1109/TITS.2025.3547418.




この研究は,駅や商業施設、イベント会場といった公共空間での人々の流れを,プライバシーに配慮しながら正確に把握するための技術に関するものです.従来のカメラ映像を用いた人流計測では、個人の特定につながりやすいというプライバシー上の懸念がありました.そこで本研究では、個人の特定が難しい3Dセンサー(LiDARや深度カメラなど)から得られる「3D点群データ」を利用します.

しかし、混雑した場所では、人が人の前に立ってセンサーから見えなくなる「隠れ(オクルージョン)」が頻繁に発生し,正確な追跡が難しくなるという課題がありました.特に,ベビーカーや大きな荷物を持つ人が他の人の後ろに隠れると、検知や追跡が困難になります.本論文では、このような「隠れ」が発生しても、AIなどを使わずに,隠れた部分を補いながら人の位置を高精度に追跡し続ける新しい手法を提案しています.この技術により、人が密集している状況でも,一人ひとりの動きを途切れさせることなく,より頑健に追跡することが可能になります.

提案手法の有効性は、実験室環境だけでなく、実際のショッピングモール入口や、大阪市北区の祭りで収集したデータを用いて検証され、高い精度が確認されました.この成果は、より安全で快適な公共空間の実現や、プライバシーを保護した新しい人流解析技術の発展に貢献することが期待されます.