無線センサネットワークにおける深層学習の分散実行
無線センサーネットワークにおいて,センサーに付随するマイコンの高機能化・省電力化が進めば,従来クラウドで行っていた学習や異常検出,判定などのタスク処理をセンサーネットワークにオフローディングし,データ発生場所に近い場所でそれらを効率よく行うことができる自律的な知能センサーネットワークが実現できます。本研究ではCNNを対象に,それをデータ発生源であるセンサー機器からなるローカルな無線センサーネットワーク内で分散実行する新しいアーキテクチャを提案し,そのための分散実行プロトコルならびにアルゴリズムを提案します。提案手法はメッシュ型の無線センサーネットワークが面的かつ定期的に取得するデータ(例えば温度分布など)を対象とし,センサーノードに深層学習におけるユニットの役割を割り当てます。
発表論文
Y. Fukushima, D. Miura, T. Hamatani, H. Yamaguchi and T. Higashino, "MicroDeep: In-network Deep Learning by Micro-Sensor Coordination for Pervasive Computing," 2018 IEEE International Conference on Smart Computing (SMARTCOMP), 2018, pp. 163-170, doi: 10.1109/SMARTCOMP.2018.00087.
環境発電型深層学習
近年, 複数のセンサデバイスから得られる環境データをもとに深層学習モデルによって状況を認識するサービスが普及しつつある.しかし, 深層学習モデル実行のためのクラウドやエッジサーバへのセンサデータ集約には, 処理負荷の集中や通信量の増大,それに伴う大量の電力消費,さらにデータのプライバシー影響範囲およびリスクの拡大といった様々な問題がある.そこで本研究では,センサデータの生成源である無線センサネットワーク(WSN)上で深層学習モデルを実行することにより, 上記の問題を回避可能なデータの地産地消かつエナジーハーベストな状況認識の実現を目指す.
具体的には, センサノード自体が環境発電で動作可能な低消費電力なマイクロプロセッサを備えることに着目し, WSN上での深層学習プロトコルであるMicroDeepを省電力化し, 環境発電駆動型のセンサノードで形成されるWSN上で実装する.
各センサノードとして, 人感センサとマイクロプロセッサおよび太陽光発電機で構成される省電力実行基板(実行基板)を設計および実装した.また低消費電力のマイクロプロセッサ上で動作可能にするため, MicroDeepプログラムの省電力化および実行基板上への実装を行った.