Wi-Fi Channel State Information(CSI)を用いた行動認識は、ヘルスケア、スマートホーム、セキュリティといった分野で、デバイス不要かつ低コストな手法として注目されている。しかし、CSIベースの行動認識は、デバイスの位置や部屋のレイアウトなどの環境要因による影響を受けやすく、これが信号の伝播に変化をもたらし、CSIデータにばらつきが生じる。これにより、異なる環境でも高い汎化性能を持つモデルの開発は困難である。
本研究では、複数の環境から得られたCSIデータを活用し、未知の環境でも高精度な認識を可能にする深層学習ベースの行動認識システムを提案する。本システムでは、encoder-decoder networkを用いたマルチタスク学習手法を採用し、環境に依存しない特徴を抽出することで、環境変動の影響を軽減する。
本研究の評価のため、3名の被験者が4つの環境で6種類の動作を行い、CSIデータを収集した。その結果、提案手法は平均66%の精度を達成し、SVCのみを使用した場合と比較して17%の向上した。さらに、少量の未知環境データを用いたFew-Shot Learningにより、最大77%の精度で行動認識が可能であることが確認された。これらの結果から、深層学習を活用した環境非依存のHARの有効性が示された。
発表論文
- 杉本雄, 内山彰, and 山口弘純. "Encoder-Decoder Network による Wi-Fi CSI を用いた環境非依存な行動認識手法の検討." マルチメディア, 分散, 協調とモバイルシンポジウム 2023 論文集 2023 (2023): 1204-1209.
- 杉本雄, 内山彰, and 山口弘純. "環境非依存な Wi-Fi CSI 行動認識に向けたオフセット軽減手法の有効性評価." マルチメディア, 分散, 協調とモバイルシンポジウム 2024 論文集 2024 (2024): 709-715.
- Sugimoto, Yu, et al. "Towards environment-independent activity recognition using wi-fi CSI with an encoder-decoder network." Proceedings of the 8th Workshop on Body-Centric Computing Systems. 2023.https://dl.acm.org/doi/abs/10.1145/3597061.3597261