5G(第5世代移動通信システム)は、高速・低遅延な無線通信を実現し、生活や産業を支える基盤となっていますが、自動運転、スマートシティ、ドローン、XR(拡張現実)といった分野が本格的に普及する将来に向けては、「より速く、より安定してつながる」だけでは十分とは言えません。
これらの分野では、通信とあわせて、周囲の状況を正確に把握することが不可欠になります。たとえば、車やロボットが安全に動作するためには、周辺の人や車両の位置や動き、見通しの悪い場所の状況などを把握しつつ、それらの情報をネットワークを通じて共有する必要があります。
ISAC(Integrated Sensing and Communication)とは
こうした背景のもとで注目されているのが、ISAC(Integrated Sensing and Communication:通信とセンシングの統合) です。ISACは、無線通信に用いる信号や周波数資源を活用しながら、同時に人やモノ、環境の状態を検知することを目指す技術です。通信とセンシングを別々の仕組みで実現するのではなく、同じ無線システムの中で効率よく両立させることで、限られた周波数資源を有効に活用しながら、次世代サービスに必要な高度な機能を実現することが期待されています。ISACは、5Gの発展形であるBeyond 5G(B5G)や6Gにおいて重要な要素技術の一つとして、世界的に研究開発が進められています。
本研究
本研究では、Beyond 5G(B5G)で注目される ISAC(Integrated Sensing and Communication:通信とセンシングの統合) を実際のネットワークで活用することを見据え、通信とセンシングの双方の性能要求を満たすための制御方式と計算基盤の確立を目的としています。
通信では高速性や低遅延、安定性が求められる一方、センシングでは検知精度や応答性が重要となるため、これらを同時に成立させることは容易ではありません。本研究では、周波数・時間・空間といった無線資源を状況に応じて時空間的に柔軟に割り当てる制御方式やセンシング制御技術を開発するとともに、エッジモバイルコア上でISACストリームデータを効率的に処理する計算基盤およびその制御方式の設計に取り組みます。








