プロジェクト概要
本プロジェクトは、JAXA宇宙戦略基金「高精度衛星編隊飛行技術」テーマにおいて、インターステラテクノロジズ株式会社を代表機関として採択された研究開発課題「超多数機の精密制御が可能な編隊飛行技術の構築」です。
衛星編隊飛行(フォーメーションフライト)とは
近年、超小型衛星やキューブサットに代表される小型で低コストの宇宙機が注目を集めています。これらは従来の大型衛星と比較して打ち上げコストを低減でき、設計・製造・運用の柔軟性が高いため、通信やリモートセンシングなど幅広い分野での応用が期待されています。
編隊飛行技術は、複数の小型衛星が協調して飛行することで、単体では実現できない高度な機能を提供するアプローチです。各衛星の電力や機能の制約を相互補完し、あたかも1つの大型衛星のように機能させることができます。

本プロジェクトの目標
1,000〜100,000機オーダの多数の超々小型衛星を、相対距離をセンチメートル精度で保ちつつ、数十メートルの範囲に配置してLEO(低軌道)上で編隊飛行させる技術を構築します。各衛星に電磁石を搭載し、相互に吸引・反発することで精密な配置制御を行います。
この技術により、数百平方メートル規模の高利得アンテナを宇宙空間に構築でき、スマートフォンなどの一般的な端末と衛星が直接通信する次世代ブロードバンド衛星通信が実現可能となります。また、多数の衛星を用いた並列センシングや広範囲同時観測など、リモートセンシングや科学観測への応用も期待されます。
連携機関
インターステラテクノロジズ株式会社を代表機関として、
- 東京科学大学
- 奈良先端科学技術大学院大学
- 大阪大学
- 湘南工科大学
- 会津大学
の5大学が連携して研究開発を進めています。
制御アルゴリズムの高精度評価システムの構築
山口研究室では、編隊飛行の制御アルゴリズムを高精度に評価するための統合シミュレーションシステムの実現を担当しています。
従来の編隊飛行研究は数機程度の衛星を想定したものにとどまっており、数千〜数万機規模の衛星群を協調的に運用するための評価技術は確立されていません。多数機編隊飛行では、相対距離制御機構のハードウェア制約や軌道上の外乱の影響などを総合的に考慮しながら、宇宙空間における挙動を精密に予測する必要があります。
大阪大学が開発する統合シミュレータは、LEO環境における摂動を含む高精度な軌道力学計算、各種センサの誤差特性を考慮した相対位置・姿勢計測の再現、電磁コイルによる衛星間相互作用のモデル化などを統合し、制御アルゴリズムを包括的に評価できる環境を提供します。また、理化学研究所計算科学研究センターのスーパーコンピュータ「富岳」を活用した大規模並列計算により、数千機以上の衛星群シミュレーションの実現を目指しています。
